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エルアーク 荒涼の船尾

 この箱舟は、エルアーク──つまり救いの船が基盤となっている中央の大島と、 そこから空中水路で結ばれた小島八つの計九島で構成されている。
 小島は船の前部から一つ、左右の側部から後部にかけて七つ浮かんでおり、 〇〇はその内の一つ、後部から伸びる島へと足を向けた。
 空中水路を渡り、島を覆い尽くす森の中を暫く進んでいると、 木々の向こうに石畳の白色がちらりと見えた。あそこが箱舟の住人の一人、 巨漢の竜人“鬼腕”の居所だ。

     ***

鬼腕


「〇〇か」

 森の中に設けられた石畳。その上で一人座していた鬼腕が、 傍へとやってきた〇〇の気配を感じて立ち上がる。

「ここへ来たという事は、自分に教えを乞いに──修練に来たか?」

 最初、鬼腕と出会ったとき、そんな話があった。 まだ箱舟へとやってきて間も無い自分に、 原理述と呼ばれる力について教えてやる、と。

「他の者に教授することは、己の知識、力を確かめる事にも繋がる。 自分にとっても良い機会だ。お前が望むなら、 今すぐにでも自分が持つ単書の中へとお前を誘い、相応なる指導、 相応なる敵を用意してやるが」

 鬼腕は腰の裏に吊り下げていた本──恐らくは彼の所有する単書を取り出して、 〇〇を見下ろしつつそう訊ねてくるが。

 さて、どうしよう?

─End of Scene─


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