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奇縁、鋼の遭遇VI[正ルート3]


 これは一体何、と〇〇が顔を上げる前に、ばくんと扉が閉じる音。見れば、既に二人の姿は戯馬の中だ。〇〇は溜息をついて問いかけを諦める。

 機体下部から風が吹き出し、各所に取り付けられた結晶がぼんやりと輝きを放つ。後部のノズルからは吸気と結晶駆動の高音が重なって響き始め、戯馬はその巨大さ、重量感からは想像もつかない身軽な動きで旋回し始める。
 風防の向こう、座席に跨ったクロエが一度手を振り口がぱくぱくと動くが、風防と機体内から響く駆動音に掻き消され、声までは届かない。その動きと形から読み取るに、恐らくは別れの言葉だろう。
 続いて彼女は傍から離れるようにという仕草。〇〇が頷いて一歩二歩と下がる毎に吹き出す風が強くなり、鋼の巨体がゆっくりと前進、加速していく。

 そして戯馬は見る間に速度を上げて、駆動音と土煙を従えながらその場から離れていった。

☆〇〇は聖堂院関札を手に入れた!

「行っちゃったッスねー」

 地平の向こうへと遠ざかっていく鋼の巨体を暫く眺めて、サニファはそんな事を呟きながら〇〇の肩の上に戻ってくる。
 もこもことした竜の着ぐるみの感触を肩に感じながら、〇〇は軽く頷きを返して、そして背後に広がる街並みに視線をやる。

(……さて)

 取り敢えず、目的地であった“人里”には辿り着いた訳だが、問題はここからだ。
 果たして、この場所に箱舟からの“楔”とやらが打ち込まれているのかどうか。
 そしてもし打ち込まれているなら、箱舟へと帰還するための付加式とやらが正常に働いてくれるのかどうか。

「それについてッスけど、〇〇様……実は、とても言い出し辛い事なんッスが……」

 ──まさか。

 何処か口ごもるような物言いに、〇〇は口の端を引きつらせながらサニファを見て、

「今軽く述式の具合を確かめてみたんスけど、絶好調で正常駆動できそうッス!! 余裕で箱舟に戻れ──あいたーっ!?」

 反射的に殴った。




「〇〇様酷いッスよー。何するッスかもー」

 それを言いたいのはこちらだった。それのどこが言い出し辛い内容なのか。不安を煽るような言い方をするなと。
 ごりごりと拳で着ぐるみの頭部分を転がしながら〇〇がそう言うと、サニファはあうあうと目を回す。

「と、取り敢えず、“ジルガ・ジルガ”の中をうろつき回るのはまた今度って事で、一度箱舟に戻るッスよ。もうエンダー様達は箱舟の方に戻ってるそうッスから、動作に関しては心配しなくても大丈夫ッス!」

「……?」

(エンダー達が、既に箱舟に戻っている?)

 円環の広間での話では、エンダー達は自分よりも半日以上遅れて記名する、という話ではなかったか。
 なのにもう“ジルガ・ジルガ”に記名し、そして箱舟に戻っていると?

「その件なんッスけど、なんか今箱舟の方と繋ぎを取ってみたら、箱舟の方じゃ既に一日くらい経過した後らしくって。エンダー様達は〇〇様と違って座標のズレが無かったみたいで、そのまま即箱舟に帰還して初回記名は簡単に終わっちゃったみたいッス」

 その言葉に、〇〇は眉を寄せて首を傾げる。
 体感だと、経過時間は大体数時間──長く見積もっても精々六時間程しか経っていない筈だが。

「サニファの感覚でも大体そんな感じなんッスけど……。姫姉様が言うには、〇〇様の記名開始から群書世界顕現までの間に欠損時間が生じたせいじゃないかとか何とか」

 判るような判らないような、何ともいえない説明だった。

「まぁ、詳しくは姫姉様から直接聞いたほうが早いと思うッス。自分も〇〇様担当の栞って事で半ば当事者になっちゃってるんで、客観的に状況を認識し辛い感じなんで」

 少々長話になろうとも、ツヴァイから直接話を聞くべきという事か。
 そう考えて、ふと疑問。今回はツヴァイの声がしないがどうしたのだろうか。前の“竜の迷宮”では、解決と同時に直ぐに声が聞こえてきていた。先程からのサニファの発言から推測するに、箱舟側との意思疎通自体は出来てそうなのだが。

「んー。記名可能周期がもう終わっちゃってるんで、サニファとあちらで情報交換くらいはいけるッスけど、姫姉様の声を〇〇様に判るようにこっちに現すのはちょっとばかしきついんスよ。今回は兎に角、記名と帰還に対する付加式を優先してたッスからね」

 兎にも角にも、一先ずは箱舟に帰還。か。

「そういう事ッス。じゃ早速帰るッスけど〇〇様、心の準備はいいッスか?」

 否も無い。頷きを返すと、〇〇の二の腕辺りにべたんと掴まったサニファの身体から、ぽぅと白色の輝きが灯る。
 その光が〇〇の身体に伝染し全てを優しく包み込むと、いつもの──書の世界から箱舟に戻る時特有の感覚が全身を支配。広がる白色が、視界と意識を塗り潰していった。
─See you Next phase─


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