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奇縁、鋼の遭遇VI[正ルート1]


 走る視界。湿りを帯びた土と点々と立つ大樹が、飛ぶように後方へと流れていく。その先に、クロエ達が標的にしていたらしい戯馬の後部が見えた。
 既に後方より迫るこちらの存在には気づいている筈だが、その速度に大した変化は無く、距離は見る間に縮まっていく。



「追いつく! セサル、メインラムはっ!?」

 正面を見据えたまま叫ぶクロエに、後部座席に収まる青年は複数の操作板の上で手を躍らせながら、視線だけを前に向ける。

「ランス運用でなら使えるように準備はしてある。加速に動力の殆どを回していたから、威力はあまり期待しないでくれ」

 対し、クロエは逆に意気を上げて、

「十分っ。尻から小突くだけだし! ──と、〇〇さん、ちょっと今から荒事になるんで、ええと……そこの出っ張り辺りを掴んで身体を固定しててっ!!」

 クロエからの指示に、〇〇は慌てて従う。
 彼女が言う出っ張りは床に近い位置にあり、掴まるには直接床に腰を下ろさなければならなかったが、寧ろその方が体勢が安定して好都合だ。突然の動きに身体を持っていかれ、この狭い中を転がり回るという情けない事態だけは避けねばならなかった。

「展開時間も長くはない、上手く決めろ。メインラム所有権をそちらへ。バイパスカット、ランス形成開──、何?」

「──って、嘘っ!?」

 と、前部風防の先で起きた出来事に驚きの声が重なった。
 目前にまで迫っていた相手戯馬が、前へ進む速度はそのまま、突然機体の向きだけを反転させたのだ。
 真後ろを向いたまま、滑るように走るその姿は異様と言ってもいい。向けられた機首からは既に淡い輝きを放つ大槍──メインラムが構えられ、こちらの突撃に対抗する意思を見せていた。

「三法則制御機構を全力稼動させて、姿勢だけを強引に逆転させた? 無茶をする。ハナから迎撃するつもりだったか──クロエ!」

「判ってる、油断しない……行くよっ!!」

 クロエがスロットルを更に開き、戯馬後部から響く駆動音がより高まった。
 戯馬が弾かれるようにして更に速度を上げ、両の戯馬から伸びた青の大槍が高速の刹那に交差する。

先行く戯馬




(戦闘略)

     ***

「取った! これで、勝ちっ!!」

 縦横目まぐるしく変化する外の景色。あまりの動きの激しさに、戦況は疎か天地すらも把握できなくなってきた頃。
 勝利を告げるクロエの声が響き、同時に真横に傾いていた視界がぐるりと一周、横方向に一回転した。
 そして震動。その揺れが戯馬の着地を示すものであると気づくのに数秒を要した。
 漸く外の風景の回転が収まり、上下左右が安定する。風防の景色は林の中、木々の間を抜けて走る見慣れたものに戻っていた。が、〇〇は床に座り込んだまま、立つこともままならず呆然とその光景を眺めるしか出来ない。戯馬と戯馬の戦いは、それ程驚愕に値する動きの連続だった。






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