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奇縁、鋼の遭遇V[正ルート2] |
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続いて、視線を左右へと振る。左手11時方向にはかなり傾きのきつい斜面があり、逆側の右手1時方向は木々の密度が多少高くなっているが、林一帯を常に覆う紫色の気配、“禁領”が持つ独特の気配が微かに薄れているようにも見える。 最後に機体の状況確認。感知系統がそろそろ致命的な状況になりつつある点を除いては、そうまずい部分はない。メインラムもクロエがかなり強引に操っているにも関わらず、下限伝達率は何とか全力稼動領域の範囲内に収まっている。この機体の特色である高水準の存在隠蔽機構も問題なく発動しており、先行する戯馬はまだこちらの存在に気づいていない筈だ。 勿論無傷とは言えず、特に足回りと各部位の三法則制御機構の消耗が激しい。動力炉直結型である主三法則制御機構も、過負荷により二度目の凍結状態に入っているが、前回と異なり今回は然程酷使していない。凍結は直ぐに解除できる。 (……さて) 以上が、現在の状況。それを踏まえて、打つ手を考える。 相手がこのまま直進を続けるなら、主動力制御をクロエに渡して推進を全て加速に回させれば、 そのまま追いつける筈だ。彼女の腕ならば、それは難しい事ではない。 だが、それはあくまで、先行する戯馬が馬鹿正直に直線機動で逃げ続けた時の話だ。 もし相手が三法則制御機構などを限界まで行使して、進行方向を無理矢理大きく変えてきた場合。 それに追従するためには、超加速状態から強引な減速を経ての方向転換となり、 その状態から追いつく事は難しく、更には制御の難度も跳ね上がる。 クロエが操縦を誤る可能性も高まるだろう。 相手が進行方向を変える事を前提に、右手か左手、どちらかに舵を切って回り込むという手もあるが、この場合先行戯馬がそのまま直進したり、逆側に舵を切った場合、完全に離される形となる。かなりの賭けだ。 「…………」 セサルは眼光を刃のように鋭く細め、思考を加速させる。 ここで仕掛けて勝てる目。それは確かにある。そう悪い賭けではないのだ。こちらの読み通りに相手が動いてくれたなら、確実に勝てる。 だが、先行する相手がどう動くか。それを予測する事自体は容易いが、予測は所詮予測でしかないのだ。相手は人間。敢えて有り得ない行動を取ってくる可能性もあり、“絶対”など到底成り得ない。 ここまで来れば、敢えて今仕掛けずとも、後々やりようは幾らでもあるかもしれない。 不確かな読みなど要らない状況、必勝といえる機会が来るのを待つ。通常の戯馬戦争《キャバリー》ならばそれでも良かっただろう。 ──しかし、自分達が行っているのは“選抜戦”だ。 その先にある『ジルガジルガ』は、待ちの姿勢で挑んでいけるようなものではない。 (ならば……) ここで敢えて攻め、自分達に天運が味方していることを確かめるのも悪くはない。この程度の幸が得られぬようでは、『ジルガジルガ』で他国領主達と渡り合う事など不可能だろう。 (「ちょっとセサル、聞いてんのっ!? 早くしないと──」 焦れて急かしてくる血気盛んな少女に、セサルは手元に置かれた制御板を操作しながら、改めて指示を飛ばす。 ─See you Next phase─ <行動選択> まだ決めていない 風まかせ 最大加速で喰らいつけ 斜面を抜けて回り込め 右へ流れて回り込め |
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