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奇縁、鋼の遭遇V[正ルート1]


 前部座席の硝子板に浮かんだ地形図。その一点、河を示す線が引かれた方角を無造作に指した〇〇に、クロエはあんぐりと口を開く。


「そっち河だよ河っ! 冗談言ってる場合じゃないんだってばっ!」

 と、必死に操縦を続けながらも律儀に突っ込んでくれる。いい反応だった。
 では冗談はこの辺にして、と〇〇が改めて二つのルートの内の一本を指差そうとしたその時。

「いや、待って」

 ──と、後ろから真剣な声が響いて、〇〇とクロエは反射的に後ろを向く。
 声の主。後部座席に座る黒髪の青年は、制御板を猛烈な勢いで操作しながら、 自分を囲うように設置された硝子板を凝視して、数秒。
 そして〇〇の方を見て軽く手を叩いた。

「これが正解、か。〇〇、この辺りの土地鑑は余り無いという話だったと思うけど、この事が判っていたのか?」

 感心したようにこちらを見る彼に、〇〇は何とも言えない曖昧な表情を返し、〇〇の考えを悟ったサニファは肩の上で笑っている。

「くふふ。今更冗談だったとか言えないッスよね、これ」

「…………」

 全くだった。というか、今自分が指したのは河へと突っ込む道だった訳だが、それが正解?
 〇〇がどういう事かとセサルに問うと、彼は前の座席に設置されている硝子板を指差す。そちらを見ると、 先程まで戯馬を中心とした地形図に二つのルートが示されていた映像が、別のものに切り替わっていた。
 それは恐らく、河の向こう岸の地形。樹の密度は素人目に見ても低く、 障害物らしきものや地面の凹凸も少ない──ように見えた。

「……えっ。ってことは、セサル、ホントに河突っ込むのっ!? 何か滅茶苦茶荒れてるし、びゅんびゅん樹とか流れてるんですけどっ!」

 クロエが後部座席と風防左手側に流れる大河を交互に見て叫ぶが、それに対する答えは、

「主三法則制御機構の凍結を解除。動力供給開始、主動力25%を一時プール。メインラムはブレードでアクティベート、25%バイパスでチャージ開始。兎に角展開時間重視で形成するから、その辺り注意して」

「何の用意してるのよ何のっ!」

 後部座席、硝子板の隙間から、鋭い目を数度瞬かせてきょとんとした顔でこちらを見るセサル。

「何のって──水上走行して、流れてくる樹をブレードで切り払いながら河を渡る準備」

「無茶苦茶だーっ!?」

「無茶でいいから、ほら、そろそろ左曲がって」

「うわーん!!」

 あれだけ文句を言いながらも律儀に左に舵を切る辺り、青年の事を信頼しているのか、単に押しに弱いだけなのか。
 戯馬が河へと飛び込む。流れる河に機体上部まで飲み込まれ、視界が全て泥水に覆われる──そんな〇〇の予想に反し、 一体どういう手品を使っているのか、鋼の塊は荒い川面に浮かび、そのまま波を掻き分けるようにして進み出す。
 が、

「クロエ、山側から来るぞ!」

 セサルの警告。川上から巨大な流木が無数、塊となって流れてくる。

「メインラムチャージ完了、バイパス解除。切り払え──!」

「あーもー、どうなっても知らないからぁ!!」

 クロエの叫びに呼応するように、戯馬から伸びた大槍に剣状の強烈な輝きが宿る。

連なる流木





(戦闘略)

     ***

 最初の巨大流木群を切り抜けた後。事前予測によって直撃コースの流木だけを弾き出し、 それをクロエにメインラムで切り払わせつつ進み、何とか河を渡り切る。
 河を渡った向こう岸はセサルが調べた結果通り、非常に進みやすい環境が広がっていた。
 更には、


「前方、他戯馬の反応確認。──捉えたぞ、先頭を」

 空中線等の主要機構を失い、萎え切った戯馬の感知系が辛うじて引っ掛けたその情報を、セサルは見逃す事無く捕まえる。
 距離はまだ遠い。だが、速度はそれ程出していないようだ。その情報も併せて前の操主席に送ると、

「よーっし、一気に追い抜くっ! セサル、主動力制御頂戴!  80%……いや、70%くれたら追いついて見せるからっ!!」

 途端意気上がるクロエに苦笑しつつ、セサルは言葉を直ぐには返さず、考えを巡らせる。
 どうすればより確実に先行く戯馬に追いつけるか。彼女のこの力強い意志を、正しい方向、勝利を呼ぶ方向に導くのが、自分の役目の一つだ。
 眼鏡越し、静かな黒瞳が座席を囲う三枚の硝子板をなぞる。まずは状況の確認。映し出されているのは、戯馬の感知系統から得られた幾多の情報だ。

 ──先を走る鋼の影は、真正面の12時方向。距離はかなりあり、肉眼で捕らえるのは難しい。幾ら感知系統が鈍っているとはいえ、その範囲は人の目に後れを取る程ではない。移動方向は自分達から真っ直ぐに離れる形。戯馬戦に於いて敵の背後を取るのはかなりのアドバンテージだ。






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