TOP[0]>攻略ルート選択 >リザルトTOP

奇縁、鋼の遭遇III[誤ルート1]


 戯馬は〇〇が示した方向へと機首を向け、林の中をひた走る。
 だが、10分、20分と進んでいくうち、道は徐々に細り、木々の密度が上がっていく。それにつれて速度は落ち、進む道を決める為に停止する事も多くなっていった。機体に取り付けられた巨大な槍のような武器で、遮る樹を切り倒すのも既に一度や二度ではない。だが、そうまでしても、サニファの言っていた地形情報の空白エリアから脱出できていなかった。

 そして。

「クロエ」



「まだ……まだ何とか、こっちのルート通ったら、もう少し……」

 停止中の戯馬の中。
 前方と、硝子板の地形図を交互に見て、何とか道を探そうとするクロエに、後部座席の青年はきっぱりと告げる。

「クロエ、無理だ。その先は袋小路になってる。進むには延々メインラムを使っていくしかない。そんな事をしていたらジリ貧だ。──引き返そう」

「でもっ!」

 ここまで来て引き返す。それがどれ程のロスになるのかは、ここに居る誰もが、部外者である〇〇さえも理解できていた。
 思わず振り返り叫ぶクロエだが、セサルは両眼を閉じて頑なに首を横に振る。

「でもも何も無い。これ以上主術法結晶に負荷を掛けると、通常航行すら難しくなる。もっと早い段階で割り切るべきだった」

 言い捨てて、青年はクロエの横で居心地が悪そうに立っていた〇〇へと視線を移す。

「あと、〇〇。一応言っておくけど、君が責任を感じる必要は無い。これは僕の判断ミスだ。兆候はあった訳だから。つい、欲が出た」

 先刻、道を選ぶ時には確かにそう言ってはいたし、実際この男は〇〇に対してなんら責めるつもりはないのだろう。クロエも同様である事は、態度からも察することが出来た。
 が、彼等がそう考えていたとしても、やはり自分の選択がこの結末を作ったという事実は覆せないのだ。自分が、別の道を指し示していれば、と気分が沈むのは避けられなかった。

「…………」

 数拍、重苦しい静寂が狭い室内を埋める。
 硝子板の隙間、セサルが僅かに首を左右に振るのが見えた。






画像、データ等の著作権は、 Copyright(C)2008 SQUARE ENIX CO., LTD./(C)DeNA に帰属します。 当サイトにおける画像、データ、文章等の無断転載、および再利用は禁止です。