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奇縁、鋼の遭遇II[2]


「────」

 その姿に、〇〇はふと既視感を覚える。

 広がる金の髪と、零れる赤い色。
 降り注ぐ硝子雪の中、死の間際にある碧の瞳。

 だが、その記憶をはっきりと思い起こす前に、少女が声を掛けてくる。

「取り敢えず、無事そうで良かったー。あの、わたし達凄く急いでて、それにこの子の感知系が調子悪かったから、あんまり前の方の状況が判ってなくて。あなたがここに居た事、もう少し気づくのが遅かったら、メインラムで丸ごと薙ぎ払っちゃうところだった」

「…………」

 慌てている風な彼女の言葉に、〇〇は何とも言えない表情を浮かべた。
 メインラムとやらの正確な意味までは判らないが、予想するに、先程空から降ってきた樹木のような感じで、〇〇自身も派手に薙ぎ払われる可能性があったらしい。

「で、ええと……それじゃ、わたし達、もう行くんで、本当にごめんなさい。出来れば色々お詫びしたいんだけど、実は今凄く急いでて、あんまり余裕無くって。ごめんね」

 言って、少女は手を組んで黙礼してから、塊の中へといそいそと戻ろうとする。
 その言葉と態度から、どうやら彼女が本当に先を急いでいるらしい事を感じ取り、〇〇は軽く手で返礼するだけで見送る事にした。

 ──のだが。

「〇〇様! チャンスッスよチャンス!」

 え、何が。
 突然耳元で叫ばれて、〇〇はぽかんとサニファを見た。
 いつの間にか〇〇の肩に掴まっていた竜の着ぐるみは、巨大物体を指差し騒ぐ。

「ほら、あのでっかい奴。多分、この世界の乗り物かなんかじゃないッスかね? だからここでアレに乗せてもらえれば、きっと直ぐにこの森から出られるッスよ! 時間短縮ッス!」

 成程、と頷き、しかし、と続けて思う。
 何やら至極急いでいるらしい彼女を呼び止めて、更には自分という荷物を乗せるように頼んで良いものだろうか。いや、良い悪い以前に、彼女がそれを許可してくれるのか。

「でも、逃す手は無いッスよ。正直な話、このまま徒歩で移動だと、森を抜けるのにどれだけ時間掛かるかわかんないッス。大まかな方角とかは判るんスけど途中山谷色々あるッスし、それになんかここ、凶暴な化物がうようよしてそうな感じが先刻から……」

 と言われると、流石にまずい気がしてきた。
 〇〇は慌てて鋼の塊に駆け寄ると、出入り口らしき部分の扉を閉じようとしていた少女に声を掛け、その乗り物に乗せてくれないかと勢い任せで頼み込んだ。

「え、えええ?」

 対して、鋼の中に引っ込みかけていた少女は、唐突な提案に目を白黒させて困り顔で動きを止める。

「と言われても……あ、でも、さっき轢いちゃいそうだったのは確かだし……いやいや、やっぱりこれ以上重量増やすのも……」

 暫くうんうんブツブツと何事か呟きながら思案していた少女だが、はっと何かに気づいたかのように顔を上げて、視線をこちらに向ける。
 その瞳は先程のような迷いの様子はなく、明確な意思、それも拒絶の意思が感じられた。

「……えと、申し訳ないんですけど、わたし達、実は今『ジルガジルガ』の“選抜式”の途中で、部外者の人を乗せ──」

 と、〇〇が感じた通りの答えを少女が告げている最中。

「ちょっと待って」

「──ふぎゃ」

 彼女を押しつぶすようにして、後ろからもう一つ、新たな影が鋼の塊から姿を現した。
 先に現れたのが金髪の少女であったのに対し、次に現れたのは黒髪の青年だった。
 暗色の衣服に黒い髪。透明硝子の眼鏡の奥には、揺らぎの無い、静かだが強い意志を秘めた瞳がある。




「ちょ、セサルっ! せまっ、狭いからっ、出てこないでいだだたっ!!」

 どうも、あの上部の出入り口は、二人が同時に姿を現すには少しばかり幅が足りないらしい。
 結果、後ろから抱えられるような形となった少女がばたばたと暴れているが、鋭利な容貌の青年の方は全く無視して〇〇を見据え、

「君、“禁領”のこの場所にまでやってくるという事は、それなりの“探求者”なんだろ? なら、この辺り一帯の地理についても明るいだろうか?」

 禁領? 探求者?
 耳慣れぬ言葉に、思わず首を捻りかけて、

「〇〇様っ! ここは知ったかぶりするッスよ!!」

 がっ、と耳元に張り付いてきたサニファの大声に動きを止めた。

(……知ったかぶり?)

 そんな事をして大丈夫なのだろうか?
 何せ自分は、つい数分前にこの世界で目を覚ました身である。 地理に詳しい訳が無く、下手にここで取り繕っても後々ボロが出るような。
 そう小声で反論する〇〇であったが、





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