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奇縁、鋼の遭遇I[続き]


 〇〇は改めてぐるりと辺りを見回し、渋い顔で唸り声を漏らす。
 あるのは太い幹を持つ針葉樹の群れと、淡く紫色に閉ざされた空だ。紫という奇妙な色で覆われた空は、どういう理屈によるものか不定期にその明暗の度合いを変化させており、結果森自体が明滅しているようにも見えた。
 木々の奥からは今まで味わった記憶の無い異質な気配が漂っており、空の様子も相まって、不快感と危機感がどんどん高まっていく。
 なるべく早くここから移動し、森を出た方がいい。結論は直ぐに出た。
 だがしかし、

(……動くにしても、どう動く?)

 森を出るならば、どちらの方向へ歩いていくのがベストなのか?
 箱舟へと戻るには、最低でもツヴァイ達が言うところの“楔”がある場所、 人里付近にまで移動しなければならない訳だから、出来ればそちらへ向かって進みたいところだが──肝心のその人里が何処にあるのかという情報が無い。

(画像)

「ああ、それに関しては、多少は大丈夫ッス。サニファ、姫姉様から簡単な地形情報を頂いてるんで」

 地形情報。地図か何かだろうか。

「地図、じゃないッスね。大雑把な俯瞰記憶とか、そんな感じなんッスけど。えーと、口で説明するのは難しいんスが、今サニファ達が居る場所は“きんりょー”ってところの端っこの方で、一番近くの街に行くには、ええと、大体こっちの方に進めばいいッス」

 言って、びっと森の一方を指差すサニファ。その先を見ても他の方角と同様の景色しか広がっておらず、何だか全く当てに出来ない感じだ。
 そんな思考が顔に出たのか、それとも栞の機能で読み取られたか。サニファの表情がむっと変わり、

「確かに事細かく判るって訳じゃないッスけど、方向自体はこっちで間違ってはいない筈ッスよ! ただ、距離がかーなりあるだけで!」

 サニファの発言に、〇〇は小さく唸る。
 一応街を顕現位置として設定していたのだから、そこから多少ズレたとしても距離はそれ程離れていないと勝手に思っていたのだが、どうやらそれは間違いであるらしい。

「〇〇様が目覚めるまでに、自分が出来る範囲で傍の地形を見て回って、それと姫姉様から貰った俯瞰記憶と照らし合わせて大体の位置を割り出したんスけど……大体、一日二日歩き続けて、漸く出られるか出られないかって所ッスかね。あと、やばそうな動物の姿をちらほら見たッスから、安全快適な森歩きにはなりそうにないッス」

 何ともげんなりする話だったが、こうして立ち止まっていてもどうにもならないのは確かだ。〇〇は諦めの溜息を一つついてから、気分を切り替える。
 兎に角、まずはこの森から脱出し、街へと辿りついて箱舟に戻る。

「んじゃ、〇〇様。出発するッスよ」

 サニファの声に頷いて、〇〇が歩き出そうとしたその瞬間。

 ──背後。
 木々の向こうで、強烈な光が瞬いた。

「?」

 振り向こうとする〇〇達の動きを遮るように、上空から響く謎の風切り音。
 反射的に上へと視線を向けると──根元辺りから切り飛ばされたらしい大樹の群れが、 空から無数に降ってきた。

「な──!?」

 太さは大人一人では到底抱えきれない程の立派なもの。それが唸りを上げて落下してくる。
 何事、と思いながらも、〇〇の反応は素早い。自身に対して直撃の進路を取る樹をまず把握し、内心慌てつつも確実に回避。続いて、近くに落下し地面に当たって大きく跳ねた一本の下へと、潜るようにして滑り込み、更に回避。続けて周囲に視線を走らせ、

「…………」

 近くに落ちてくる樹が無い事を確認すると、〇〇は取り敢えずの危機は去ったと判断して浅く息を吐きながら立ち上がる。

 と、

「──〇〇様、危ないッス!!」

 今度は木の合間を縫うようにして、巨大な鋼の塊が〇〇の方へと突っ込んでくる!

     ***

迫り来る鋼が現れた!
[敵出現]




─See you Next phase─





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