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聖公庁研究棟



 ドウ、と音をたてて、最後の魔獣が倒れた。
 モルトは音ひとつたてぬ訓練された足の運びで、研究棟の最奥にたどりついた。
 暗紅色に彩られた金属製の扉がゆく手をふさいでいた。

「――!」

 モルトの研ぎすまされた聴覚が荒々しい呼吸音を感知した。

 ――扉のむこう……何かいる!

 人間のそれではない。何か巨大な……魔獣。
 モルトは大きく息をつくと、暗紅色の扉をあけた。

「ようこそ、わが研究室へ」

 扉をあけたモルトを、真紅の魔女カルミネラが出迎えた。

「――エルニノ」

 真っ先に彼の目に入ったのは、 台の上に横たえられたエルニノの姿だった。 目を閉じ、浅い呼吸をくりかえしている。

 魔法の眠り。
 これと同じものを、モルトは以前にもみたことがあった。
 地下室に監禁されていた、エルニノの母、レナータを看取ったときのことだ。
 ――助けだしてやる、必ずな。
 錬金魔術の秘薬をおさめた色とりどりのビン類に交じって、もうひとつ、 目を惹くものがあった。
“それ”は、鉄格子のなかで荒い息をついていた。
 翼ある獅子のような姿をした、みるもおぞましき魔獣。
 赤い皮膚、サソリのような尻尾――伝説に登場する人喰い獣“マンティコラ”に酷似していた。

「実験の哀れな犠牲者か」

「いいえ。わたしのかわいいペットよ」

 カルミネラが格子に手をむけると、閂はみえざる手にあやつられるかのように、ガチャリとはずれた。

「――!」

 低いうなり声を発していた魔獣が恐るべき咆哮をあげ、モルトに襲いかかった!

人を喰らうもの(たぶん強そう)が現れた!

敵画像

─See you Next phase─








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