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中庭
戦闘敗北

 錆びた金網のフェンスを越えると、赤茶けた土とわずかな草のみが生える、何もない空間に出た。
 ここが、中庭だろうか。
 金網には『立入禁止区域』の文字が書かれたプレートが縛り付けられている。
 どことなく不穏な空気を感じるものの、禁じられた場所にしてはやけにガードが甘い気がする。
 現に、先ほど越えてきたフェンスには、有刺鉄線のひとつすらなかった。
 それがかえって、気味悪さを増幅させているのだ。

 その時、明らかに何らかの生物のものと思われる唸《うな》り声が聞こえてきた。
 ――来る。

戦闘省略

「うっ……強い」

 僕は地面にうずくまりながら、思わず声を漏らした。
 間違いない。この強さは、この工場内で作られている生物兵器だ。
 モンスターは僕が戦闘不能であることを確認すると、高々とフェンスを乗り越え、去っていった。

「はは、僕に戦う意思すらないと悟ったのか。知性もあるみたいだな」

 ゆっくりと体を起こし、体中についた赤土を払う。
 それにしても、おかしい。
 先ほどのモンスターは、おそらくこの場所の管理モンスターだろうが、ハッキリ言って放し飼い状態だった。
 しかもこれだけ暴れているというのに、警報の音ひとつ鳴らないなんて。
 もしかして……黙認され、独立した場所なのだろうか?
 あるいは、目的を持った誰かが、訓練の場として警報システムを解除しているのだろうか。

 次々と疑念が湧いてきたが、考えたところで答えが出るはずもなかった。
 僕は再びフェンスを越え、工場の中へと戻ることにした。

─End of Scene─



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