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覚醒

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「――! ここはどこだ!?」

 格子の外は月夜だった。
 まぶたが重い。
 視界はおぼろげで、何もかも曖昧模糊としている。

 見当識と記憶の大半が失われていた。あるのは“恐怖” の圧倒的な質量だけ。

 ――ストラルドブラグ。

 その言葉だけが記憶にのこっていた。モルトは半身をおこした。

 ――身が軽い。

 音もたてずに、床に降りる。敏捷な筋肉の動きはまるで、 狩猟中の野生動物を思わせる。

 周囲をみまわした。
 部屋には扉があったが、開け放たれており、 モルトを束縛するものは何もなかった。

 ふとモルトの脳裡に、ある女の名が浮かんだ。

 ――カルミネラ……真紅の魔女。

 はたして、何者の名だったか?

「かはっ!」

 突如として猛烈な吐気に襲われて、彼は嘔吐した。
 臓腑のすべてをぶちまけるかのような大量の血を吐いたのち、 吐気はおさまった。

 ――寄生虫、いや、臓物の破片か……?

 血の池でうごめくちいさな何かをみつけて、モルトは戦慄した。 口の端にべっとりとついた血糊を手でぬぐう。

 そのとき、モルトの混濁した意識が、忍びよる危険の兆候をとらえた。

      ***

 ――餓狼か。

 開け放たれた扉のむこう。
 血の匂いをかぎつけたオオカミが、ゆっくりと近づいてくる。
 モルトは、自分の聴覚が人間ばなれしたレベルまで研ぎすまされているのを自覚した。

 素早く床に視線を目を走らせると、 自分のものらしき武器が転がっている。

 間一髪!
 モルトが武器を手にした瞬間、扉の外から、 餓えた狼たちが襲いかかった!

月夜に吼えるもの(微妙に強そう)が現れた!




─See you Next phase─








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