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覚醒

「結構です。その状態で、はっきりと決 断が出来る。それは賞賛に価すべき事でしょうね」

 少女がにっこりと微笑み、そしてこちらに向けて 手を伸ばす。その指先が弾かれ、小さく音が鳴ると 同時。○○の視界にあったもの全てが入れ替わった。
 そこは白色の壁に覆われた大きな部屋だった。 球状の室内の中央には、大樹の切り株に良く似 た台座があり、その上には巨大な本が一つ。支 えも無く、ふわりふわりと浮かんでいる。

「では、始めましょうか。おいでなさいな、“迷い人”さん」

 いつの間にか、もう一つの影の姿は無く 。その台座の上に立った黒衣の少女が、不 思議な呼び名と共に○○を手招きする。
 呼ばれている。まだはっきりとしない意 識の中、それだけを把握する。
 部屋の隅にぽつんと立っていた○○は、 声と笑みに引き寄せられるように、ふらり と彼女の傍へと歩み寄った。

「“挿入栞”を──今、貴方が 持っているそれを、貸していただけますか」

 少女が指差すのは、○○の手の中にあ る剣の形をした奇妙な物体。元々彼女が つい先刻渡してきたもので、これが自分 のものであるという意識は薄い。言われ るままに差し出すと、少女の笑みが一段と深くなった。

「今の貴方が、ここでの出来事を覚 えていられるかは判りませんが、これ だけは伝えておきます」

 波打つスカートを翻して、少女は○○ に背を向ける。その先には、支えも 無く宙に浮かぶ一冊の巨大な本がある。

「ここは人々が生きる世界の外側。 幾多の世界を収めし命の揺り籠。そ して私は、その世界達と人々をただ 見守り、定める者」

 その本は奇妙な形をしていた 。まるで四角い箱のようなシルエッ トに、複雑かつ硬質な装丁。背 表紙となる筈の部分には独特な 装飾が施され、その中心には深 い切れ込みが一つ。

「今から貴方という存在を、 この書物の中──“群書”が 構築する世界へと挿入します」

(……本の中に、入れる?)

 突拍子も無い発言に、○○が目を瞬かせる。
 振り返った少女は、○○のその様子を見てくすりと笑った。

「ええ。本の世界に、貴方は入る。無茶 苦茶な話のように聞こえるかもしれま せんが、直ぐにそれがどういったもの かご理解いただけると思います。…… もっとも、今のこの会話を“仮記名” 後の貴方が覚えていれば、の話ですけれど、ね」

 少女は手にした剣状の何か ──彼女の先程の言から察す るなら、挿入栞という名のそ れを、本に入った切れ込みに添えて、

「これ以上の事を知りたいと。私達 との繋がりを望むなら、この箱舟へ ──『エルアークへ戻りたい』と己の中 へと訴えかけなさい。そうすれば、 貴方の持つ栞が、こことの道を繋い でくれるでしょう」

 言葉と共に、その小剣を本 の中へと挿し込んだ。

    

「──それでは、またお会いできる事を楽しみに」




 ──なんで我慢しなくちゃならねぇんだよ。

 ──このままではいずれ枯れ果てるぞ。

 ──後のことは後で考えりゃいい。

 ──それでは遅い。

 ──今が楽しけりゃそれでいいんだ。

 誰かが言い争っている。
 二人、三人、いや、もっと大勢か。
 そこは真っ黒い霧に覆われてい るかのようにぼんやりとしていて 、そこにいる人の顔も姿もよく見 えない。ただ、怒鳴り声だけが反響している。
 話は一向にまとまる気配がない。
 ああ、なんだか眠くなってきた 。決まったら起こしてくれ。そん なことを考えながら、開いている のかどうかも分からない目を再び 閉じた。

 寒い。
 次に目が覚めたとき、○○の 身体は冷え切ってガタガタと震え ていた。左の頬の下には冷たい 感触。どうやら石畳のようだ。
 目を開いて動かしてみる。
 暗い。
 夜だろうか。辺りは静まり返っている。
 重力の働く向きへと背中を 向ける。正面に月が見えた。 ほとんど欠けていて、明かり としては不十分だが、ここが 屋外であることは分かった。
 のそのそと起き上がる。
 右には薄汚れた木製の壁が見 えた。左にはひび割れた石の壁 が見えた。正面にはでこぼこの 石畳が続いている。どうやら街 の中のようだ。

 ──背後にぴりぴりと張り詰 めた殺気を感じる。

 とっさに前に転がる。
 刹那、○○の背後の石畳に何 か硬質のものが当たった音。
 殺気はまだ途切れていない。
 慌てて立ち上がり体勢を立 て直す──そこで頭の中のも やが晴れ、記憶が明瞭になっ てくる。何か武器になりそう な物は──

襲撃者(微妙に強そう)が現れた!
襲撃者,メリル

─See you Next phase─


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