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歌舞伎町 鈴に思いを口にする |
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わきあがる温かな思いが口をついて出そうになって、僕は慌てて飲み込む。 ――現実世界では恥ずかしすぎて言えない言葉だ。 ためらう僕を、スズが見つめていた。 まるで僕の本心を見透かすように。 気まずい、永遠のような一瞬。 スズは何をひらめいたのか、突然、立ち上がる。 「この瞬間を永遠に残しておくの」 そういって、スズはいたずらっぽく微笑み、携帯でメールを打ちながら物陰へ隠れた。 ならば僕もと、今飲み込んだ言葉をメールに乗せた。 「君がここにいてくれて、ありがとう。この星空を、スズに贈るよ」 メール送信。 同時に、僕の携帯からいつもの曲が流れだす。 ♪遠く離れていても、つながっているのかな? スズのメールが届いたんだ。 物陰でスズの着信音が鳴り響いた。 ♪わたしの祈りは着信音にのり、あなたのもとへ 初めて聞いた、スズの着信音。 偶然か、運命か。 僕の着信音のアンサーソングだった。 奇跡の出会いを喜ぶ恋人たちの曲。 僕が男性バージョンを、スズは女性バージョンを着信音にしていたのだ。 スズのメールにはこう書かれていた。 「あなたがここにいてくれて、ありがとう。星空は私からガク(○○)へのプレゼント」 僕たちは、同じ思いを抱いていたんだ。 物陰に隠れていたスズが、ちょこんと顔をだす。 スズにも、僕の気持ちが届いたようだ。 右手に握った携帯を振りながら、僕ににっこりと微笑みかけるスズ。 月明かりに照らされた彼女は、ほんものの“天使”に見えた。 スズはつま先歩きで僕の横に歩み寄ると、素早くしゃがみこんで、僕に寄りかかってきた。 もちろん今度は、しっかりと目を開いたまま。 僕たちはよりそって夜空を見あげ続けた。 いつまでも、いつまでも。 強い光をまぶたの裏に感じて、僕は目覚める。 「おはよう、ねぼすけさん」 スズが、落ちていた鏡の破片で、僕に太陽を反射させていた。 いつまでたっても起きない僕にしびれをきらしたらしい。 今朝の瓦礫の歌舞伎町は、抜けるような青空のもと、陽炎で揺らめいていた。 スズは、本当の世界では、歌舞伎町でバイトをしていたという。 だから今日は、スズとふたりで、どうしてもやってみたいことがあったんだ。 現実世界でスズが生きていたという、かすかなかけらを探す旅。 ─End of Scene─ 新宿中央公園へ自動的に戻っている 次回12時間更新 【選択肢】 まだ決めていない 風まかせ 都庁へ 仕事を手伝う 策敵活動 中野方面へ 初台方面へ 代々木方面へ |
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