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歌舞伎町

【備考】
意識の狭間後

 闇の中、僕が足を踏み出すと、足元には何もなかった。

 落ちる!!

 浮遊感に驚いて、僕は全身をこわばらせる。

 同時に、目の前には瓦礫の歌舞伎町が広がった。
 僕の隣には、僕に寄りかかって寝息を立てるスズ。
 僕は一瞬だけ、深く眠ってしまったらしい。

 意識が遠のく瞬間に聞いたサイレンは、まだ鳴り続けていた。

 一瞬のまどろみの中で見た夢は、ただの“夢”だったのか?
 それにしては、すべての感覚がリアルだった。

 逃げている時の息苦しさ、警官に腕を掴まれた時の激痛、取調室の空気と、蒸し暑さ……。

 もしも、あれが、現実世界の僕の今の姿だったとしたら?

 だけど、警官から聞かされた僕の行動は違和感だらけで、とても自分自身とは思えなかった。

 僕にもわからない、現実の“僕”か。
 笑えない冗談だ。

 仙人が言うように、この世界の僕の行動が現実世界の僕を不幸へ追いつめているのか?

 向こうの僕は、ナイフを使って何をたくらんでいたんだ?
 悪い予感しか浮かばない。
 だとしたら、頼むから、思いとどまってくれ!

 こうしちゃいられない。
 取り返しのつかない事態になる前に、はやく、元の世界へ帰らなきゃ。

 僕は、不安と焦りと恐怖に打ち勝つために、左腕に寄りかかっているスズを見た。
 僕の斜め下にある、たしかな肌のぬくもり。やさしい髪の感触。
 小さな寝息さえ聞こえる、ふれたら、とけそうなくらいの距離にいる彼女。
 その時、スズが目を覚ました。

 彼女の声は、僕のいろんなモヤモヤを吹き飛ばした。
 スズは、目覚めたばかりの顔を僕に向けて、こう言ったんだ。

「何もない街の方が綺麗だね」

 スズは月面のようなこの場所から、夜空をしっかりと見つめていた。
 僕もつられて空を見あげる。

スズと夜空を

 雨はすでにやんでいた。
 雨雲は風でかき散らされ、澄んだ夜空には、満天の星が輝いていた。

 僕は呼吸を忘れた。
 全然知らなかった!
 空には、こんなにもたくさんの星があったのか。

 監獄島で毎晩夜空を見ていたけど、星なんて見ちゃいなかった。
 脱走してからは、空を見上げる余裕すらなかった。
 それほど僕は、この世界において、精神的にも肉体的にも追い詰められていた。

 思えば僕は、今まで夜空をまともに見上げたことなんてなかった。
 東京の夜空なんて、立ち込める雲に、色のついた灯りが反射するだけだから。
 それに、あの頃の僕は空なんかよりも、歌舞伎町の雑踏の中に眠ってるはずの夢や冒険に目を奪われていたんだ。

 恋人、洋服、お金、髪型、友達……。
 目に見える何かを手に入れたくて、必死でもがいていた。
 それさえあれば、退屈な日常を抜け出せると思ったから。
 でも、手に入れられない自分に気づくのが嫌で、何も欲しがらないふりをしていた。
 僕は自分を騙そうとしていた。

 今はどうだろう?
 この世界は、いつ死ぬかわからないほど、過酷だ。
 けれども今僕は、追い求めていた物を、少なからず手に入れていた。

 例えば、こんな星空と、隣にいる彼女。
 本当の世界には存在しない幸福。

 いつ死ぬかわからないから、目の前にある星空や彼女をこれほど大切に、愛おしく思うのかもしれない。

 僕が生きていて、彼女も生きていて、偶然出会い、今ここにいる。
 どれかひとつでもかけていたら、成立しなかったこの一瞬。
 なんて奇跡的なんだろう。

─See you Next phase─

【選択肢】
・まだ決めていない
・風まかせ
・鈴に思いを口にする
・鈴の手を握る
・鈴を抱きしめる


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