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捕虜生活

-セルリアの章フラッシュ-


 テロ組織“コギト”の指導者リュウシンはわたしたち3人を人里はなれたアジトへと連行した。

 ……と言っても、そこは『ファミリオ』という名前の、 ちいさな村の民家。粉ひき小屋やサイロが点在する、のどかな牧草地。

「うわぁ、ヒツジさんだ! ぼく、本物みるの初めて!」

“救世主”エルニノさまは、さっそく村の探索をはじめた。

 西をみれば、見事な夕焼け空。

 ――それにしても。

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「テロリストのアジトにはみえないなぁ……」

 わたしのつぶやきを、リュウシンがムッとして聞きとがめた。

「オレたちがやってるのはテロじゃない。 腐敗した共和政府への抵抗運動、レジスタンスだ」

「……エルニノさまを人質にとっておいて?」

「危害をくわえるつもりはない」

 そう言うと、かたわらのモルトにむきなおった。

      ***

「皮肉なもんだな、モルト・グラッスス少佐。10年前の “大戦”でエルニノを救出して英雄になったあんたが―― こんどはオレたち“コギト”に加担し、エルニノ拉致に手を貸した。 なぜだ?」

“戦争の英雄”グラッスス少佐の名前なら、よく知っていた。
 血の結束でむすびついた、“ブラックベレー”の鬼隊長。
 赤子だったエルニノさまをとりもどした、決死の救出作戦。 難攻不落の“巨岩城砦”からただひとり生還した逸話は、 いまや伝説だ。

「“大戦”後のあんたの消息を、風の噂に聞いた―― 脱走兵として当局に追われてるってな。どうしていまになって、 姿を現した」

「……」

 口を閉ざしたままこたえないモルト、腕組みしたままのリュウシン。
 ふたりの顔を見比べていたら、 リュウシンがいきなりニヤリとくちびるの端をつりあげた。

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「そうか、この女のせいか」

「――は!? ちょっと、何言ってるのよ!」

 根も葉も幹もない話がいきなり降ってきて、リュウシンに抗議する。

「ま、時間はたっぷりある。いずれ聞かせてもらうさ」

 リュウシンは後ろ手で挨拶すると、民家のひとつに姿を消した。
 日は沈みきり、モルトとふたり戸外にのこされた。

─See you Next phase─


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