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辺境の街

 自分の方向感覚と他人のアドバイス、どちらが信用できるか?

「もちろん、他人だよね」

 モルトの言ったとおり、まわれ右して街道を反対の方角に進む。すれちがう人の数が増えてきた。

      ***

「――ん?」

 道ばたに、きらりと光るものがみえた。

「勲章――!」

 それは古い勲章だった。
 ザクソニア侯国との境界にほど近いこの街道は、 かつて“大戦”の舞台となった場所。
 落とした兵隊さんは、いったいどんな人だったのだろう?

 くすんだ黄金の勲章は、不思議な輝きを放っていた。

「さて、街は北にあるはずだけど――」

 北がどっちかもわからないままモルトの言うとおりに進んだら、 本当に街についた。
 ……軽い敗北感。

☆○○○は黄金勲章を手に入れた!



「さあ買ってった! シェバ産のマルメロだよ! ジャムにすると、 とっても美味しいよ!」

 南北を走る交易路ぞいにあるこの街のバザールは、 エキゾチックな果物なんかをたくさん売っている。
 いたって平和平穏無事な街。
 当然、内戦なんてやってない。

「『ルクレチアぶらり旅紀行 〜辺境編〜』ってタイトルの方が似あいそう――」

 にぎやかなバザールの光景を、ファインダーごしに眺めながら、 カメラをスライドさせる。

「あれ?」

 商人へ果物の代金をわたす、ひとりの男の子に目がとまった。




 とっても高級そうな、純白と濃緑色の法衣。 栗色でやわらかそうなふわふわの髪。まん丸い、 輝くような薄いレモン色の瞳。
 どこのお坊ちゃんだろう。
 って。

「“救世主”エルニノさま!?」

 エルニノさまは、われらが聖公シエロさまのご養子。
 次の聖公になられる方。

 信仰の象徴である聖印の指輪を手にしてご生誕あそばされ、 3歳にして聖典を読破、6歳で神学院を卒業されたという神童。

 ルクレチアの民は、エルニノさまが天の救世主だと信じている。
 そうして“大戦”の痛手にもめげず、復興をはたしたのだ。

 そのルクレチアのアイドルが、なぜこんな辺境でぶらり旅を!?

─See you Next phase─








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