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初台 天使発見 |
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僕たちは、東京の思い出を、二人で探し歩いた。 出会えなかったこれまでの日々の片鱗は、すべて瓦礫の街にうもれてしまっていたけど、僕たちは、本物のデートをしてる気分になっていた。 そんな幻想を打ち破るように僕たちの前に、見覚えのある男が立ちはだかった。 僕は、とっさにスズをかばうようにして、身構える。 その男の顔は、忘れやしない。 青年実業家だった。 こいつのせいで、僕たちはこの戦時下の東京に引き込まれた。 あげくの果てには、現実世界まで壊れ始めている。 おまえさえいなきゃ……。 天使 〜戦闘省略〜 うらみつらみが噴き上がり、思わず男のシャツの胸倉につかみかかる。 でも、思いが激しすぎて、僕は言葉が出ず、うなることしかできなかった。 一方の青年実業家は抵抗することもなく、僕にされるがままで、初めて会ったときと同じ笑顔でこう言った。 「不幸な世界へ導いた、私が憎いか? だが、冷静に考えてみたまえ。むこう側の『幸福にあふれた』世界で、君は本当に幸福だったのか?」 確かに僕は、退屈な日常にうんざりしていた。 だからって、寿命が縮むほどの不幸を望んではいない。 死んでしまったら、何もかも終わりだ。 激情がわきあがり、胸倉をつかむ力が一層強まる。 「君たちは、この戦時下の東京で、現実の世界にないものを手に入れたはずだ」 僕の体は硬直した。 僕の中で、ある答えが浮かんでいたからだ。 男は、さらに微笑んで続ける。 「生きる実感だ」 僕の体から全身の力が抜ける。 今までの出来事が、一瞬のうちに蘇った。 ――爆撃に腰を抜かして、ベンチの下へ転がり込んだ時。 ――モンスターに狙われた同僚を、思わず助けてしまった時。 ――仲間たちから英雄として慕われた時。 ――スズのメールにうかれて、星空を見上げた時……。 たしかに、僕はこの世界で生きる手ごたえを感じていた。 この男の言うことは、まったく正しかった。 僕の一瞬のスキを見抜いた男は、僕を冷静に引き離した。 涼しい顔で衣服の乱れを整えた男は、僕を見据えてこう言った。 「私は、君たちを救ったのだ。退屈という不幸から」 男は、極上の笑顔をつくる。 その無感情な笑顔にむかついて、僕の怒りは爆発した。 でも、炸裂した激情は、懲罰房の拘束服のように僕を締めつけた。 歯を食いしばり、うち震えるだけの僕に、憐みの表情をたたえて男は言う。 「現実世界で居場所を見失った人物に、この世界の居場所を提供する。それが私の役目だ。選抜者は、この戦時下の世界で生きる実感を手に入れ、この世界は選抜者がいる限り、絶滅をまぬがれる。こうして、すべての存在が、幸福になる」 戦時下の東京では、いともたやすく命が消える。 敵国による爆撃で、国家権力による強制労働で、物不足による飢えや病で。 減り続ける人口を補てんするために、僕たちはこの世界へさらわれたのか。 男は、さらに極上の笑顔で締めくくった。 「こう見えても私は、二つの世界を守護する天使なのだ」 天使には、僕の運命を踏みにじる権利があるのか? もしも神様が認めたとしても、僕がそんなの許さない。 「あんたのいいなりにはならない! 僕は元の世界に帰る!」 余裕に満ち溢れた天使は、勝ち誇ったように言った。 「どうやって?」 反論はできなかった。 確かに、合図を探す手掛かりはない。 「警告だ。君の居場所は、目の前に広がるこの世界しかない。現実を受け入れ、この世界にふさわしい存在であれ。それが、君たちにとっての最大の幸福だ」 そういって、天使は立ち去った。 ─End of Scene─ 次回12時間更新 自動的に瓦礫の町へ |
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