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原形質 |
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○○は下水道の各所に刻まれている区画番号を見ながら、
目的の場所へと急いだ。 しばらく進むと○○は異変を感じた。 酷い悪臭が辺りに立ち込めている。 下水道に普段から充満している悪臭とは違う、 空気そのものが腐っているかのような臭い。 しばらく吸っていると昏倒してしまいそうになる。 腐臭がどちらの方からするのか探っていると、 今度は口笛のような、しかし○○を酷く不安にさせ る不気味な音色が、前方から聞こえてきた。 ○○はその音の方へと駆けていく。 音は○○の頭の中で反響を繰り返し、脳の奥底に 針を打ち込まれたかのような感覚を生み出していた。 湧き上がる恐怖心で脚が竦《すく》んで今にも立 ち止まりそうになる。 しかし、そんな感覚をなんとか隅に追いやり、○○は走り続けた。 「○○!」 ペーターとその向こうにメリル。そして、 更にその向こうには巨大な黒い塊が見えた。 その塊を一目見ただけで、隅に追いやった はずの恐怖心が増殖し、脳の支配権を獲得 するべく動き出していた。 塊はもぞもぞと蠢《うごめ》き、体表のあ ちこちには目や口、触手のように見える器 官を次々と創出しては削除していた。 口のような器官からは先程の口笛のよ うな音色をさせ、目の前にいるメリルを捕 食しようと何本もの触手を伸ばしている。 ――今までのデモノイドとは明らかに異質だ。 ここにそれが存在することは許されない。 そう感じずにはいられなかった。 「オイ! 聞いてるのか!」 ペーターの声で我に返る。 「いいか、アイツにいくら切りつけても無駄なの は、メリルが実証済みダ。凄まじい再生能力を持 っている。しかも、あのサイズだ。半端な攻撃 を幾ら繰り返しても仕方がない。でダ、これ からメリルが集束術式と呼ばれる強力な術式を行 使する。ダガ、集束術式を行使するには十分 な集中が必要になる。デ、メリルが集中力を高め る間、オマエさんはメリルがやられないようにアイツの 攻撃を引き付けろ。メリルの集中力を高める補助 でもいいし、ひたすらアイツの攻撃に耐えてもい い。トニカク、準備が整うまで持ちこたえろ!」 ○○は武器を構え、塊とメリルの間に割って入った。 メリルは一旦後ろに下がり、手甲を腰に下げ、代わり に炎を象《かたど》った大きな杖を――どこから 取り出したのか分からないが――ペーターから受け取った。 そして、それを眼前に構え、精神集中を始めた。 「……任せたぞ」 染み出す原形質が現れた! ─See you Next phase─ |
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