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瓦礫の町/font>

 天使の背中は、余裕をたたえて、瓦礫の街に消えていく。
 僕は追いかける気力すら起きなかった。
 アイツを追いかけたところで、もとの世界に帰れるわけじゃないから。

 全身の力が抜けて、その場にへたり込んだ。
 そんな僕のとなりに、スズもしゃがみこみ、力強くこういった。

瓦礫の町

「落ち込んでる暇なんてないよ。立ちどまってるくらいなら、少しでも今できることをやって、吹き飛ばしちゃおう」

 今できること?
 それって、いったい何だろう?
 僕は、天使の言葉をぼんやりと反すうした。

 確かに、ここには現実の世界にはない、『リアルな生』があった。
 工場でリンチを受けた日々、敵国の空襲、飢え。
 死と隣り合わせの日常は、肉体の存在感を絶えず僕につきつけた。
 現実世界で、これほど自分の肉体を意識したことなんてなかった。
 この緊張感と恐怖は、逆説的に『まだ生きている!』という力強い証明だった。

 サイレンが遠くで鳴り響く。
 仲間たちの交替の時間だ。
 命がけの生活をともに耐えしのんだ仲間たち。
 みんな、無事だろうか。

 そうだ、仲間たちを解放しなくちゃ。
 僕たちはアジテーターなんだから。

 心を固めた僕を見て、スズはうれしそうに微笑んだ。
 同時に、僕とスズは顔を見合わせて、思いをぶちまけた。

「監獄島へ、みんなのところへ帰ろう!」

 僕とスズの声は見事にシンクロして、ハーモニーを奏でたんだ。
 その時だ。
 僕はある事実に気づいた。
 サイレンの音が、不思議に懐かしい響きに聞こえるということに。

 この世界に初めて来たとき、サイレンが鳴っていた。
 でも、それよりもずっと前から、僕はこの音を聞いていたような気がする。

 いったい、どこで?

 僕は渦巻くサイレンの音の波を聴きながら、音の螺旋の奥へ奥へと僕の意識を潜水させた。
 たどりついた螺旋の終着点は、別の音の始点にもなっていた。
 意識の奥で掘り当てた、もうひとつのメロディ。
 それを僕は、サイレンの音に合わせて口ずさむ。

 ♪遠く離れていても、つながっているのかな?

 僕たちの世界で街にあふれていたラブソング。
 サイレンの音とは、似ても似つかない、せつないメロディ。
 二人が出会えた奇跡を歌ったリリック。

 スズも一緒に口ずさみ始める。

 ♪わたしの祈りは着信音にのり、あなたのもとへ

 僕たちがたぐりよせた曲は、それぞれの携帯の着信音だった。
 何度も聞いたサビのメロディ。
 スズは、さらにその先を歌い続ける。

 ♪メールが遠く離れたふたりをつなぎますように

 メールがつなぐ……。
 その時、僕は唐突に思い当たる。
 工場のサイレンが鳴り響く時、メールを受信することが多かった。
 この世界に初めて来たときも、サイレンが響く中で、天使のメールを受信した。
 アイツからメールが来た時は、必ずサイレンが鳴っていた!

 つながった!?

 元の世界へ戻る合図、ふたつの世界をつなぐ音。
 それは、いつもそばにあった、このサイレンとメールの受信音。

 だとしたら、サイレンを鳴らす工場に、合図の秘密があるんじゃないか?

 僕は、このすばらしいひらめきを、一気にスズに語りつくす。
 はじめは、半信半疑の様子だったスズにも、僕の興奮が伝わったのか、最後には、満面の笑みになっていた。

“音”の秘密が解けた今、僕たちの使命は決まった。
 この世界の変革者――アジテーターとして、真っ先に、仲間たちを解放する。
 それからじっくり、元の世界へ帰る方法を探すんだ。

 スズの笑顔のためにも、とにかく、工場制圧が第一だ!

 ――その時、僕たちは、“希望”を見つけた気がしたんだ。

─End of Scene─

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