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円環の鍵主2


【備考】
コネクティング・メヰルver

 ツヴァイに教えられた通りにレバーを操作すると、 昇降機となる台座ががくんと下へと沈み始める。 ○○は慌ててその上へと乗った。
 台座は鈍い音を立てながらどんどん降下、 厚い床を抜けて更なる下層へと○○を誘う。
 そして眼前に広がったのは、 縦十数メートルはあろうかという円筒状の巨大な広間だった。
 白色の大石を歪み無く敷き詰めて描かれた曲面は滑らかで、 石と石の継ぎ目すらも殆ど感じられぬ程。
 そんな曲面で構成された壁の下部には、 不可思議な形状の巨大な扉がずらりと並び、 どれもが隙間無く閉じていた。
 そうしている間に台座は更に沈み、 ○○の視界も下がっていく。 どうやら自分が乗っているのは、正確には台座ではなく、 地下から伸びる巨大な柱の上であったらしい。
 部屋中央に立つ柱をぐるりと囲うように 円形の長机が設置されていたが、一箇所だけが途切れており、 完全な真円の机という訳ではないようだ。
 台座は、広間の床と同じ高さになると動きを停止。 ○○は恐る恐る台座から白色の床へと着地する。

「おや。来たかね、“迷い人”殿」

 と、背後から声。
 振り向けば、円を描く長机の内側。 転々と置かれた椅子の一つに、 硬質の人影がゆったりと腰掛けていた。
 何らかの金属で組み上げられた、人よりも一回り大きい、 凸凹とした玩具人形。そんな風体の彼は、 口から伸びた細い管を上下に振りながら、 頭部をこちらへと向ける。
 拍子に、ぼふ、と。
 口元から白い煙が派手に漏れ出して、彼の周囲を包んだ。
 人形がぎしりと椅子から腰を上げると、 ○○の傍へとゆっくりと近づいてくる。
 彼がツヴァイの言っていた“管理人”だろうか。

准将


「私の名は“准将”という。この“円環の広間”で、 各“群書”の状態管理を任されている。 素性はまぁ、見ての通りの人形だな。素材は錫《スズ》。 上のお嬢ちゃん──ツヴァイと違って、 完全な人に化けるとか器用な真似は出来ん、 ごく普通の自動人形という奴だ」

 准将と名乗った人形が差し出した手が、 握手を求めるものだと気づくのに数秒を要した。

「私の方はこんな所だが──お前さん。 “縁”が完全に切れてるとは聞いているが、名前の方は?」

 慌てて手を取り、そして名を返す。 自分が唯一覚えていた言葉を。

「○○か。名を思い出せるなら、ギリギリ大丈夫。 お前さんは完全には壊れちゃいない。 “栞”を使って生きていくなら、 この先顔を合わす機会も多いだろう。宜しく頼む」

 こちらこそと返して手を離すと、 表情など無い筈の准将の顔が、 何故か力強い笑みを浮かべているように見えた。

「さて。ここにやって来たという事は、 用件は“仮記名”──本の世界へと入りに来た、 という事でいいのかね?  上のお嬢ちゃんからは一通りの説明は受けたのかな?」

 ある程度は受けたが、 本に入る関係の事柄は管理人に訊けと言われた事をそのまま伝えると 、准将はまるで溜息のように口元からぼふと煙を吐く。

「まぁ、こちらが説明するのが筋といえば筋だが…… 私は説明下手でね。必要な事だけを手短に話すことにしよう」

 錫人形はそう前置きして、口にしていた管を手に取り、 部屋の壁に並ぶ大扉を順々に指していく。

「ここは簡単に言えば群書を保管、維持する場所だ。 群書という言葉についての詳しい説明は後でツヴァイにでも頼むといい。 まだるっこしい言い方で色々と教えてくれるだろう。 ……それで、そちらに並んでいる扉の向こうにある部屋に、 一冊ずつ群書が収められている」

 続いて、准将は腰に手をやると鍵束を取り出し、 ○○に見えるように軽く振ってみせた。

「これが、あの扉の鍵だな。お前さんが入りたい書物があれば、 私に言うといい。その本へと続く扉を開けてやろう」

 と言われても、入りたい本とやらを選ぼうにも、 自分はここにどんな本があるのかを知らない訳なのだが。

「まぁな。それに、仮記名が可能なのはあくまでこちら ──“箱舟”から専用の楔《くさび》を打ち、 更に同期が安定している群書に限られるから、 そう自由に何処にでも入れるという訳でもない。 実際は少々不安定だろうと記名に大した影響はないのだが、 わざわざつまらないことでリスクを背負う必要もないだろう?」

 否定する理由も無く頷くと、准将は満足そうに頷きを返す。 眉や髭を示す装飾が、 その感情を示すようにかくかくと動くのが面白い。

「それで、今安定して挿入が可能な群書は、 二つある。ひとつは“サヴァンの庭”、 もうひとつは“ラストキャンパス”と私達は呼んでいるな。 本当はもう少し格式ばった名があるのだが、 それを覚えたところで意味も無いから説明は省こう。 ちなみに、お前さんが先程まで入っていた群書世界も、 この内のどちらかだ」

 錫人形はぎしりと身体を鳴らし、 部屋の各所にある扉を眺めて、一つ、 二つと視線だけで指し示した。

「サヴァンはあの扉、ラストキャンパスはあの扉だな。 扉の向こうにある部屋に、見間違いようの無い本が一冊ぷかぷか浮かんでいるから、 それに“挿入栞”を挿せばそれで終い。簡単だな。 挿し込み口も、ちゃんと一見して判る位置についている──あとは」

 准将はそこで言葉を切ると、鈍い音を立てながら長机まで戻り、 そこから一冊の本を取り出す。

「この間ツヴァイから借り受けた“単書”だ。単書について簡単に説明すると…… 要するに、群書をもっと単純にしたものだな。これに入ってみる、 という選択肢もある」

 そして准将の視線が○○に戻る。こちらを見下ろす視線は、 何処か試すような色すらも混じっていて、

「さて、どうするね? 何なら、私が選んでやろうか?」

 その言葉に、○○は──。


ーEnd of Sceneー


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