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共に進めず |
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共に進めず 円環の広間。無数の書物を掛け合わせ、 一つの巨大な世界を作り出すという“群書”と呼ばれる構造。 この広間は、その群書達を収めるための専用の部屋である。 〇〇はエンダー達と共に、群書の中へと入る──仮記名するため、 この部屋へとやってきたのだが。 「お前さん達、どうも相性が悪いぞ」 広間と、そして群書を管理する役目を担う錫《すず》人形 “准将”から、何故か駄目出しを喰らってしまった。 「どういう意味よそれ。俺達と、 入ろうとしてる本の相性が悪いっての? そんな話、姫様から聞いてねーけど。〇〇、聞いてる?」 怪訝な様子で〇〇の方を見るエンダー。しかし、 こちらもそれは初耳だ。実際、自分は“サヴァンの庭”にも、 “ラストキャンパス”にも問題なく記名できている。 対し、准将は首をきしきし鳴らしながら横に振る。 「本との相性の話ではなくてな、お前さん方と、〇〇。 この相性が、という話だな」 准将は、エンダーとアリィを指差し、次いで〇〇の方を指差す。 頭上に疑問符を浮かべて顔を見合わせる〇〇達に、 准将はのんびりとした口調で話を続ける。 「正確には、相性が良すぎてまずい、といったところか。 エンダーとアリィと言ったか? お前さん達、確か箱舟に顕現するとき、 傍に居た〇〇と接触があったと上のお嬢ちゃんから聞いたが」 准将は、どうだ? と〇〇の方を見る。 彼らが現れた主の書室達での奇妙な出来事。あの時、 自分がその直ぐ傍に居て、あの“落丁” と呼ばれる現象を間近で見たのは確かだった。 「その時の影響かは知らんが、お前達、 どうも存在概念に共通項があってな。 一部の単書ならば大した影響はないかもしれんが、 群書への仮記名や、一般的な単書への同期記名を行おうとすると、 恐らくまずいことになる」 そこで言葉を切り、判るか、と視線で問うてくる。 エンダーは「んー」と小さく唸って、 隣で今まで一言も喋っていないアリィの方を見上げた。 「……なぁ、アリィ。お前話判ってる?」 「?? その時の影響かは知らんが、お前達、 どうも存在概念に共通項があってな。 一部の単書ならば大した影響はないかもしれ……」 「いや、誰も鸚鵡《おうむ》 返ししろって言ってるわけじゃねーんだが」 「己と、〇〇。一緒に行けぬ?」 「……まぁ、そんな感じの話なのかね。で、玩具のオッサン。 まずいって具体的にどういうことよ?」 「干渉しあって混ざったり、消えたり。そんなところだな。 本来は栞があれば防ぐことが出来る要素なんだが…… 〇〇が既に栞を持っていて、 それごと落丁に巻き込まれたせいでそういう訳には行かなくなっとる。どうも、〇〇が親で、お前さん方がその……型といっていいのか判らんが、 〇〇の基本の形を継承した存在としてここに在るらしくてな」 何だかあれやこれやと准将は語っているが、 結局のところは、自分とエンダー達は共に同じ本の中に入れない、 という事だろうか? 「正確には『同時に入れない』だな。別々に、 ずらして記名する分には問題ない。エンダーとアリィ、 お前達二人でも問題ないだろう。だが、 〇〇と一緒に入るのは問題だ。お前らのどっちかが、 親の概念に取り込まれちまう可能性がある」 (……取り込まれるって) 「何だかおっそろしい話だなおい」 〇〇とエンダー、顔を見合わせ、深々と溜息。 そしてエンダーはがりがりと髪を掻き乱すと、 改めて一度息をついて、 「しゃあねぇ……取り敢えず、あれだ。俺らは一度戻るから、 〇〇だけでも群書の方に行ってくれていい。あと、 これから一緒に行動してるときに〇〇がこの広間へ向かったなら、 俺達はそこで別れる事にする」 こういう事ならば仕方が無い、か。 「んじゃな。気が向いたら俺らの部屋──“黒煎の客間”だっけ。 あそこにでも寄ってくれ」 了解と答える〇〇に、エンダーは小さく苦笑を返す。 〇〇は引き上げていく彼らを軽く手を振り見送った。 ─End of Scene─ |
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