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沼地に立つ大樹


     ***

 北東を目指して進む内、問題の大木に対して抱いていた予感が正しかった事を確信する。

 光線の加減だろうか、 木の幹に人の顔が浮かんでいるように見える。
 風もなく、鳥が留まっている訳でもないのに、 時折ぴくりと枝が揺れる。

 どう見ても怪しすぎる。
 戦闘態勢を保ったまま間合いを詰めていくと、 幹の顔が不機嫌な形に歪むのが見えた。
 もはや間違いようもない。大方の予想通り、 人面樹が木の葉を散らしながら襲い来る!

※以下戦闘勝利

***

 めりめりと音を立てて大木が傾いだ。
 頑健な胴体は裂けることがなく、 傾くにつれて張り巡らされていた太い根が土を跳ねて露わになる。
 大木はそのまま夥《おびただ》しい数の木の葉を散らしながら横倒しとなり、 水面を強かに叩いて激しい飛沫を上げた。
 湿原に轟音が響き渡り、周囲の鳥達が抗議の声を上げて飛び立った。

     ***

 改めて付近の様子を見ると、 ここはどうやら行き止まり。南西に戻るしかないようだ。
 肩を落とし、倒れた大木を恨めしく見やる。 そこで気がついた。

(ん、これはひょっとして……)

 倒れた大木の横腹に足をかけ、 ぐいぐいと体重をかけて押してみる。
 かなりの重量があるようで、大木は転がるどころか、 倒れた状態のまま微動だにしない。
 それどころか、力を入れると軸足を支えた地面の方が沈み込む有様だった。
 これなら人間が数人乗ったぐらいではびくともしないだろう。
 倒れこんだ方向は東――湿原の入口方面だ。

 これが上手い具合に対岸まで届いていれば、 この木を橋代わりにして東西を往復することも出来そうだ。
 今すぐ東に向かう意味は全く無いが、 次にここを訪れた時には近道として使えるかも知れない。
 覚えておいて損は無いだろう。
 ここは湿原北西部にあたる小さな丘だ。
 育ちすぎていた樹木の一本は現在東に向かって倒れており、 丸太の架け橋のような状態となっている。

─See you Next phase─





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